Amazon1強がアメリカ国内で書籍小売チェーンに大きな影響を与えており、業界最大手バーンズ&ノーブルの苦境も長らくメディアを通じて伝えられていました。こんにちは、コンテンツプロデューサーの佃です。今回は、米書籍販売大手バーンズ&ノーブルが“ハゲタカ”に買収される件について。
アメリカ最大手でも書籍販売が苦戦
アメリカ最大の書店小売・チェーンのバーンズ・アンド・ノーブルは1965年創業、全米で700店舗以上を展開しており、2011年には電子書籍に進出し電子ブックリーダー「NOOK」をリリースしました。
しかし、物販ではAmazonのネット販売に押され、電子書籍では参入の遅れが響きAmazonやkoboなどの攻勢が続き、経営危機に追い込まれます。2010年以降は常に身売り話がささやかれておりましたが、2019年6月についに、売却についてのニュースが世界で配信されました。
米書店大手B&N、ヘッジファンドが買収 740億円
米書店大手バーンズ・アンド・ノーブルは7日、米ヘッジファンドのエリオット・マネジメントに6億8300万ドル(約740億円)で自社を売却することで合意したと発表した。
単なる身売り話ではない不安
苦境に陥った企業を買収、再生し高値で売り抜けるよくある話かと思いきや、突き詰めてみてみますと、この身売り話はそんなに生易しいものではないことが分かります。
つまり買収したエリオット・マネジメントは、その評判や過去の案件からいわゆる“ハゲタカ”ファンドとして有名で、しかも米国では「最も獰猛なヘッジファンド」と恐れられているのです。
ココがポイント
日本では、真山仁氏の経済小説やドラマで知られる「ハゲタカ」ですが、アメリカではメーカーのみならず、ついに書籍業界にも参入したことが驚きです
国家ですら儲けの対象とする最強ヘッジファンド
米国のヘッジファンド、エリオット・マネジメントは弁護士のポール・シンガー氏が創設。
ペルーやコンゴ共和国など債務不履行に陥った国の債権を買い叩き、元本・金利などあらゆるものを取り立てるハゲタカファンドとして知られています。
エリオット・マネジメントの名を世界に知らしめたのはアルゼンチンの案件です。
2001年に、対外債務のデフォルトを宣言したアルゼンチンの債権を買い集め、支払いを要求。拒否した政権に対し、米国で訴訟を起こし勝訴、軍艦差し押さえはなど民間企業としては考えられない徹底的な追い込みをかけ、結果としてアルゼンチンは約23憶ドルを支払うこととなり、エリオット・マネジメントの勝利で終わります。
一方で、日本の民間企業にも触手を伸ばしており、日立国際電気や東芝、アルプス電気の関連会社、アルパインの大株主としても登場しています。
書籍業界でハゲタカが何を目指すのか?
エリオット・マネジメントは、全米最大のバーンズ・アンド・ノーブルのほか、1982年創業でイギリス最大手書店チェーンのウォーターストーンズもすでに傘下に収めており、ニュースによると独立して運営される見通しとのことです。
2011年、ウォーターストーンズの最高経営責任者にジェームズ・ダント氏が就任し、画一的な運営手法ではなく個別書店の積み上げ式による手法でウォーターストーンズの再建に成功、バーンズ・アンド・ノーブルCEOを兼務することで、地域の特性や店の個性を生かした同様の手法をバーンズ・アンド・ノーブルでも採用することを述べています。
しかし、書店チェーンはどこが買収して運営してもアマゾン1強は変わらず、もはや書籍販売でシェアを急拡大させ収益向上を図ることは極めて困難です。
イギリスで成功したといわれる正攻法がアメリカで通用しない場合、収益化を目指すあまり書店・書籍業界にとってマイナスになるような極端な戦略をとらないことを願うばかりです。
まとめ
国家ですら骨の髄まで吸い取って収益を目指すハゲタカファンドが、アメリカとイギリスで書店チェーンを買収し、今後何を目指すのか、何をしかけてくるのか、関係者はもちろん一般の書籍ファンにもとっても気がかりです。
書籍、そして書籍を扱う書店チェーンには、単に利益だけを求めるという経済的な側面を合わせて、広くあまねく文化を伝える・残すという役割もあります。
そのことを踏まえてエリオット・マネジメントがバーンズ・アンド・ノーブル再生に成功するのか、ニュースの続報を見守りたいと思います。
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