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海外漫画・アニメ市場の状況は?

今回は、一般的に大成功し続けていると思われている、いわゆるクールジャパンの海外、特にアメリカの状況について考察します。

アメリカでクールジャパンはどうなの?

日本政府挙げてのクールジャパン戦略は、果たして世界で成功しているのか?という疑問を持つ方も多くいらっしゃいます。弊社も2011年に電子漫画を英語版を始め各国語版をリリースし、日々細かく状況を見てまいりましたが、一般的なイメージによくある「海外で日本の漫画やアニメが大人気!ずっと右肩上がりで市場として成立している」というものとは違い、2000年代後半に一旦しぼみかけていた漫画・アニメ市場が新しい世代による漫画・アニメへの関心の高まりにより、ここ最近盛り返しつつある、というのが実感です。

日本の漫画が盛り上がった2000年代前半

2002年に日本のマンガをmangaとしてリリースしたアメリカの出版社TOKYOPOPの功績により、日本の漫画がアメリカを含む北米市場で拡大し、ピークの2007年には売り上げ規模約250億円(1ドル=120円換算)程度のmanga市場を形成することとなった。その間アニメ放映後にmangaを販売し、相乗効果でmangaも売れて行くというビジネスモデルが決め手となり、2007年以降もmangaはそのまま拡大を続けると思われていた。

しかしリーマンショックが起こった2008年前後からmangaの北米における売り上げ減少が顕著になる。

2010年には2007年から30%以上ダウン、TOKYOPOPも2011年に北米の漫画出版事業から撤退。アメリカでは書店での漫画販売が一般的ではない中で、積極的に販売を行っていた大手書店チェーンの倒産がそのきっかけの一つになったとも言われている。

またアメリカの漫画市場は日本と違い、mangaを読む購買層が若年層に限られ、リーマンショックによる不況や書店チェーンの撤退など、マイナス要因が絡み合った結果売り上げ減少に見舞われ、mangaが北米で復活するのは難しいとみる向きもあったほどだ。

電子漫画やYoutubeなどデジタルメディアで新機会創出

売り手視点で分析してみると、アマゾンキンドルという電子書籍の登場がこの状況を変える基礎となる。

電子書籍は紙の書籍がデジタルに置き換わり、極めて低いコストで漫画を世界に配信できるという物理的メリットに加えて、セルフパブリッシングという『世界中のだれもが出版できる』構造的な障壁を取り除いた仕組みにより、漫画市場にも劇的な構造変化が起こる。

2010年から2011年の電子書籍市場はというと、アメリカにおいて日本の大手出版社の電子漫画リリースはほぼなく、セルフパブリッシングを活用して世界のインディ作家・漫画家がオリジナル作品をリリースするほか、一部のアメリカン・コミックが配信されているのみという状況であった。

こうした中で「メイドですから!」(英語タイトル BECAUSE I'M A MAID!)は、2011年3月リリースから約3カ月後の2011年6月に、アマゾンキンドル(電子書籍)漫画チャートでアメリカにて1位を獲得、引き続きイギリス、フランスでも1位獲得、そして2015年の今も100位以内に入り続けるという幸運に浴している。

Amazon Kindle Bestseller in Manga U.S.A

功を奏した要因としては、競争相手が少ない時期に電子書籍でアメリカでリリースできたこと、大手出版社でなくてもアメリカで配信が可能になったこと、そして「メイドですから!」の価値観がアメリカの読者に刺さり続編を継続できた、あるいはその検証が極めて早い時期に出来たということが大きい。

さらに電子書籍というものを前段の「日本の漫画が2010年まで衰退し続けていた」という現象と照らし合わせてみると、様々なグローバルな価値観・多様性を含んだmangaを既存の印刷本販売ルートによらず、世界中から瞬時にリリースできるような環境をもたらしたことこそが、右肩下がりであった北米manga市場構造に小さからぬ影響を与えた。

動画プラットフォームがもたらす新ユーザー

そしてもうひとつ、買い手視点で分析してみると2006年にローンチしたYouTube、さらには有料無料動画プラットフォームの躍進があげられる。

2015年7月にアメリカ、ロスアンジェルスで行われたアニメエキスポには、過去最大の述べ26万人が来場し、過去3年間続けて右肩上がりを記録している。このエキスポは漫画やアニメを中心に、様々なクールジャパン系コンテンツが披露される北米最大のイベントで、Huluなど有料動画配信サービス各社も軒並みブースを構え、新規ユーザー獲得のプロモーションに余念がない。なぜなら有料動画配信プラットフォームでのアニメ配信は、新規ユーザー獲得の手段として見逃せないほど拡大し、同業者間の競争も激化の一途をたどっているからだ。

またYoutubeでプロモーション動画が世界中に拡散した日本のアイドルグループと、アメリカの超大物ロックグループも登場し会場を大いに賑わせたが、YouTubeの動画自体がこのイベントやアイドル文化、アニメ・漫画の人気拡大、知名度向上に好影響を与えたことは言うまでもない。

電子書籍を売り手視点のイノベーションと見るならば、この有料無料動画配信プラットフォームによるアニメなどの動画配信は、買い手・ユーザー視点から見れば、漫画やアニメ、その他のコンテンツを知る機会になったメディアイノベーションであり、この車の両輪があることから、北米manga市場は復活の可能性を見出すことができた。

これからの課題など

電子書籍や動画配信プラットフォームの登場で上向きかけているとはいえ、北米漫画市場はまだまだ予断ならない状況が続く。

最も大きな問題は日本に比べると圧倒的に小さいアメリカの漫画市場規模。日本の漫画市場規模が4000億円弱とすると、わずか10-20分の1で、日本の人口の3倍ありハリウッドを抱えるエンターテインメント大国アメリカ合衆国としてはまだまだ開拓の余地がある。
いままで手が出なかったユーザー層にリーチする手段が増えている今、電子書籍や動画配信プラットフォームはもとより、大手・新興SNSプラットフォーム、新メディアツールの活用が大いに求められる。

さらに動画配信プラットフォームが急拡大しているとはいえ、競争も激化しているため市場規模、つまりパイを広げ同業他社が成長しながら共存できる市場拡大を急がなければ、企業が共倒れし再び市場縮小というリスクがあることも忘れてはならない。

2015年現在、日本の漫画、そして漫画家はまぎれもなく世界最高峰。しかし漫画を描くアジア人も増加し、世界各国の価値観で漫画を判断し購入する時代になれば、日本の漫画の優位性は揺らぐ可能性もある。一日も早く日本の漫画(manga)の世界での成功例を作るべく、数千万から数億程度の比較的規模の小さいプロジェクト、これから可能性があるコンテンツをバックアップする官民一体となった協力体制ができれば望ましい。

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